料理研究家として名を馳せている方はたくさんいますが
どの人の本を参考にするかは
人によって好みが分かれるところだと思います。
今活躍している人で 私が好きなのは
高橋みどりさんや高山なおみさん そして大人気、平野レミさん。
このお三方の作るお料理は
なにより材料がすぐ手に入り 時間がかからず簡単なのが良いところ。
子どももモリモリ食べられて お酒にも合う料理が多いんです。
でも 私にとって最も特別な「お料理の先生」は
昨年惜しくも亡くなられた
シャンソン歌手でエッセイストでもあった
石井好子さんです。
名著「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」
「パリ仕込みお料理ノート」
パリに憧れるバリバリのオリーブ少女だった10代の終わり頃
母の本棚にこれらの本を見つけたのが
石井好子さんの本を好きになったきっかけです。
以来 何度も読み返している私のバイブル。
異国の香りが漂う 美味しそうなお料理の描写に唾をゴクリ
エッセイから垣間見る、優しくて朗らかな人柄や
家族思いでありながら 決して 糠味噌くさくないイイ女で
パリ仕込みのお洒落マダムだった所も 憧れる点です。
先月 単行本に収録されていなかった 未発表のエッセイ集
「バタをひとさじ、玉子を3コ」(河出書房新社)が
佐々木美穂さんの素敵なカバーをまとって発刊されました。
表紙をめくるとすぐに
●春風の中で楽しむデザート 北欧風のリンゴ菓子
●イマジネーションがだいじ コンビーフキャベジ
●栗をつめた仏風ローストチキン
など 作って食べて飲んでみたくなるタイトルが
並んでいます。
本にはカラフルな料理写真が載っているわけではなく
文字と少しのイラストしかないのですが
読んでいると 頭の中に湯気のたった料理が次々浮かんできて
口の中は涎でいっぱいになります。
生前 石井さんの経営していた音楽事務所では
夕方5時半を過ぎると 石井さんの
「そろそろ一杯いかが」の声で白ワインが抜かれ
社員が仕事を片付けながら飲み たわいない話をするという
なんとも羨ましい風習があったそうです。
若い頃から海外で暮らし 歌で身を立ててきた女性なりの苦労や
最愛のご主人やお父様を亡くしてからの哀しみなど
歳を重ねられている分 悲喜交々のあった方。
まさにシャンソンのような人生を歩んだ人。
だからこそ 上記のような軽やかなエピソードが
輝きをみせている気がするのです。