週末は北海道中ひどい暴風雪の天候でしたが、
札幌はまだかわいいもんだとニュースで知りました。
被害に遭われた人もたくさんいるので
札幌レベルの吹雪で何をと言われそうですが、
荒れ狂う吹雪の中を歩いて呼吸ができず前が見えなくなるとき
身の危険を感じます。
自然には逆らえない、人間とはちっぽけなもの…
ちょっと前に読んだ本の中から印象的だった3冊です。
西川美和『その日東京駅五時二十五分発』(新潮社)日本軍の機密文書を扱う通信隊に配属された19歳の若者が、
終戦後に故郷の広島に帰るまでのお話です。
(西川さんの叔父さんの実話)
この物語には、今までさんざん見聞きしてきた
戦争の悲惨な情景は一切登場しません。
軍隊にありがちな血も暴力もなく、
のどかさすら感じる隊員生活を淡々と描写しているからこそ、
原爆を落とされた広島の現実をこれから知ることになる
少年の心理を想像すると背筋が凍ります。
物語は列車が広島駅に到着するところで終わるのですから。
あの戦争をこういう切り口で書くのか!
と映画監督でもある西川さんの才能に
また驚かされた一冊でした。
卯月妙子『人間仮免中』(インタープレス)小5から統合失調症という精神病を患い
自殺未遂を繰り返しながらも、
生活のためにストリッパーやAV女優をしていた漫画家、
卯月妙子さん。
これは、彼女に生きる希望と喜びを与えた男性ボビーとの
愛の物語を描いた『実録漫画』です。
新聞の書評でキョンキョンがオススメしていたので
読んでみたのですが、これがホントに凄いマンガだった〜
統合失調症患者の幻聴、妄想のすさまじさといったら!
体験者が語るだけはあります。
自分も一緒にその壮絶な幻覚症状を
体験しているような気分になり、頭が疲れて
休憩しながらでなければ読めませんでした。
でも、還暦を過ぎた恋人ボビー
(純日本人のくたびれたおっちゃん)の
精神的なフォローと懐の大きさにホロリとなります、
卯月さんでなくても。
この病気がなかなか完治しない彼女、最後は歩道橋から飛び降りて
顔面が破壊されながらも一命を取り留めるのですが、
それでもなお、愛し支えるボビー。
激しすぎる恋愛の成れの果ては絶望
というのが王道ですが、
(映画ベティーブルーを思い出します)
この物語には生への希望がありました。
途中、かなり気分が沈みますが
読んでみたいという方がいたら、私に声をかけてくださいね。
そしてもう一冊、
いしいしんじ『ある一日』(新潮社)いしいさんご夫婦の、
彼らの赤ちゃんが生まれてくる一日について書かれた本です。
いしいさんらしい神話的な表現で書かれた
生命誕生の描写も感動的なのですが
巻末の、奥さまが我が子に向けて思いを綴った『バースプラン』は、
母親としての無償の愛が痛い程伝わるもので
思いきり泣けました。
いつもながら装丁も、とっておきたい
素敵なものでした。
谷川俊太郎 詩×宇野亜喜良 絵 という強力タッグの絵本
『おおきなひとみ』(芸術新潮社)が
今いちばん見てみたい本です。
春を呼ぶウサギ。
外は吹雪ですが、少しずつ新しいブローチが生まれています。