1月の終わりに。宮の森美術館で
映像作家の伊藤隆介さんの展覧会を観てきました。
伊藤隆介さんは短編映画やビデオインスタレーション
(映像と造形を用いた美術表現)を発表している、
札幌生まれのアーティストです。
精巧に作られた模型やジオラマを
無人のビデオカメラで撮影し続けモニターに映し出すシリーズ、
Realistic Virtuality(現実的な仮想性)は
模型そのものにオタク男子的な面白さを感じたし、
映し出された一見意味のない映像には
想像力を掻き立てられました。
写真を撮ってもよい展覧会だったので撮影しましたが
この作品のタイトルは《自由落下》です。
スクリーンには、空をくるくる回りながら
永遠に落ち続ける原子爆弾が映し出されていました。
決して地上で爆発することのない爆弾であることから、
この映像作品は反戦メッセージであると受け取りました。
目の前で実際に回っているのは
7センチ程のかわいらしい原子爆弾の模型。
小さな原子爆弾を、ビデオカメラを通すことで巨大化させ
何もかもを破壊してしまう脅威の存在に見せてしまう仕掛けが面白い。
映像の力というものを感じました。
一度見たら忘れられない悲しいあの映像…
この世の果てのような荒涼とした砂漠に
ナイフを持って立つ黒装束の男。
オレンジ色の囚人服を着せられ膝まづく二人の日本人。
全世界を一瞬で駆け巡ったあの恐ろしく衝撃的な映像は
まるで映画のワンシーンのようなインパクトがありました。
そして残忍な殺害映像がYouTubeで見られるという…(私は見ません)
異常な時代になったもんだと胸が苦しくなります。
伝えることを使命としていたジャーナリストの後藤さん。
テレビ画面に映し出された彼の表情からは
強い覚悟や祈りのようなものを感じましたが、
絶体絶命なあの状況で一体何を考えていたのでしょうか。
これは勝手な推測に過ぎないのですが、
自分の命が消えようという刹那に
テロリストたちの非道さを
そしてこれが今シリアのあちこちで起きている現実なのだと、
だから残された人たちでこの惨状を何とかして欲しいということを
身をもって伝えようとしていたように思えてなりません。
人質になってしまった二人の日本人と政府の対応を巡っては
ネット上でもさまざまな発言が流れてきましたが、
そのいくつかに嫌悪感を感じたり、また共感したりしました。
日本中が悲しみに沈んだ東日本大震災の時もそうでしたが、
非常時に人の本質が現れるものです。
情報や意見が多すぎて惑わされそうになることも時々ありますが、
そんな時は心静かに立ち止まり
自分を見失わないようにしなくてはと思っています。
どうかこれ以上、
傷つき家族を失って悲しむ人びとが増えないように。
愚かな復讐合戦はもうやめにして欲しいです。